猫のハンデがメリットに?自分のライフスタイルに合う猫と暮らす
ペットのおうち®︎ スタッフがシェルター「ボランティア ねこ活」(宮城県)に行ってみた!
ペットのおうち®︎ スタッフは、宮城県白石市で活動する「ボランティア ねこ活」のシェルターを訪問しました。ねこ活で保護している猫の中には、ウェルカムチャレンジに参加している保護猫もいます。今回はねこ活 代表の佐藤さんに、ハンデを持つ子を迎え入れるという選択肢についてお話を伺いました。一緒に暮らしていくために必要なお世話を知ることで、「ハンデ」という言葉にとらわれず、自分にぴったりのペットとの出会いを見つけられるかもしれません。
※ 情報はシェルター訪問時のものです。その後、シンバ将軍はトライアルを経て、里親が決定しました!(2/5現在)
取材・文 スタジオダンク
シンバ将軍
ウェルカムチャレンジ中のシンバ将軍、くるみ、さんご
ペットのおうち 今日はウェルカムチャレンジ中のシンバ将軍とくるみに会えることをとても楽しみにしてきました!実際に会ってみると本当にかわいいです。まずはシンバ将軍とくるみについて、それぞれご紹介いただけますか。
佐藤さん シンバ将軍はシニアで、原因の分からない眼振と首の傾きがあります。眼振はおそらく不安や緊張からくるもので、保護当初は頻繁に見られましたが、ねこ活のシェルターに慣れていくうちに落ち着いてきました。首の傾きも日常生活に支障があるわけではないため、ユニークな見た目や性格を魅力に感じてくださるような里親さんが見つかることを願っています。
佐藤さんがつけているシンバ将軍の記録
くるみ
ペットのおうち くるみの性格やお世話についてはいかがでしょうか。
佐藤さん くるみは下半身麻痺と、現在は膀胱炎を抱えています。下半身麻痺によりオムツを着用しているため1日に3回オムツを替えること、膀胱炎になってしまった際は薬を毎日飲ませることが必要になります。オムツは朝と夕方、夜に替えるので、遅くとも17時には仕事などから帰ってこられる里親さんを希望しています。また排便は時間を決めて全て出させるように調整しています。そうすることでくるみも人間もストレスなく生活することができるからです。オムツをしているとどうしても膀胱炎になりやすいため、おしっこの色や匂いなどを注意深く観察していただきたいです。
ペットのおうち くるみとの生活では、特別なケアが重要になるのですね。
佐藤さん 健康な猫ちゃんとは違うケアが必要なことは確かですが、くるみはオムツを替えるときもゴロゴロと喜んで喉を鳴らしてくれます。下半身麻痺と聞いて可哀想と思うのではなく、かわいいと感じていただける里親さんに出会えるといいなと思っています。
佐藤さんがつけているくるみの記録
ペットのおうち 今日実際に2頭に会ってみて、性格、雰囲気を含めてそれぞれの個性を強く感じました。シンバ将軍は女の子の猫ちゃんにべったりくっついているのがとっても可愛いですし(笑)、くるみも人馴れしておりとても優しい子で、お尻を使って上手に移動ができることに驚きました。甘えん坊のくるみにとっては、おむつ替えの時間もコミュニケーションのひとつになっているんですね。
同じくねこ活で保護されており、ウェルカムチャレンジ中のさんごは、人見知りもなく甘えん坊です。保護当時からお利口だったさんごですが、猫エイズ、猫白血病のダブルキャリアで2年以上里親が見つかっていません。現在、預かりボランティアさんのお宅で過ごしているそうで、残念ながら ペットのおうち®︎ スタッフはさんごに会えませんでしたが、佐藤さんからさんごの普段の様子や保護してから現在までのエピソードを聞かせていただきました。
佐藤さんがつけているさんごの記録
キャリアや傷病を抱える猫が安心できる選択肢に
ペットのおうち シンバ将軍やくるみのような傷病のある子に加えて、猫エイズや猫白血病のキャリアの子も、なかなか里親が見つかりづらいそうですね。
佐藤さん そうですね。キャリアの子は健康な子に比べて里親さんを見つけるのが難しいのが現状です。特に、エイズについては発症しない場合もある一方で、基本的には発症するリスクがあるため、不安を感じる方が多いのかもしれません。ただし、感染から発症までの期間には個体差があり、発症までに10年以上かかることもあります。発症しない場合があるため、キャリアのない子と一緒に過ごさせる飼い方をしているケースもあるようですが、私は感染予防の観点からキャリアの子とそうでない子は分けて飼うべきだと考えています。そのため、「ねこ活」のシェルターでは部屋を完全に区切って生活させています。
その上で、個人的にキャリアの子を迎えることは、むしろ自分の生活設計を立てやすいと考えることもできます。たとえば、ご高齢の方にはご自身のためにも猫のためにもキャリアの子を勧めるかもしれません。キャリアのない猫だと20年前後生きる可能性がありますから、ご高齢の方が健康な子猫を飼うとなると最期までお世話できない可能性があると考えているからです。
ペットのおうち なるほど、キャリアの子を迎えることは、猫にとってだけでなく、飼い主さん自身のライフスタイルに合った選択ができる点で大きなメリットがありますね。特にご高齢の方の場合、生活設計を立てやすいキャリアの子を選ぶことが、ご自身にとっても猫にとっても安心できる選択肢になりそうです。
佐藤さん キャリアの子に限らず、先ほど紹介した下半身麻痺のくるみは、シニア世代にこそぜひお勧めしたいです。手厚いお世話をすることが、シニア世代の方の生活に張り合いをもたらすこともありますし、くるみは早く動くことができないため、脱走の心配も少なく安心です。
残念ながら、成猫と傷病猫を中心に保護しているねこ活を運営していると一般的に「健康な子猫が一番良い」という考え方が根強いと感じます。しかし、健康な子もいずれ病気になる可能性があります。年齢や生活スタイルなど人間の特徴に合わせて、ベストフィットする子を選んでほしい。そのときに、成猫や傷病猫が当たり前に選択肢の1つになってくれたらいいなと思っています。
新しい視点で猫を迎える
ペットのおうち そうですね。健康で若い猫が最も魅力的だと考えられる一方で、それ以外の特徴は敬遠される傾向があると感じます。
佐藤さん 私はマイナスではなく、適性や特性と捉えるべきだと考えています。そういった視点で見ることで、新しい魅力を感じていただけるはずです。皆さんの認識が少しでも変わるきっかけになれば嬉しいですね。
成猫やハンデのある猫を迎え入れる際には、特別な覚悟を持つことに加えて、自分のライフスタイルに合った選択をすることが何より大切です。ねこ活では、それぞれの猫の特性を理解した上で、里親さんにとっても猫にとっても最適な環境を作るお手伝いをしていきたいと思っています。





健康上の理由、経済的な理由により、止むを得ずペットを飼育できなくなるという事態は、誰にでも起こり得ます。その時、ペットが高齢であったり、病を持っていたら、里親はなかなか見つからず、飼い主もペットも途方に暮れることになります。
ですから、持続可能なペット文化を実現するには、難しい状況のペットでも温かく引き受けてくださる保護団体を「みんなで支える」仕組みが必要です。
ペットのおうち®はウェルカムチャレンジを通じてこれを実現し、保護団体の負担を軽減しながら、保護犬・保護猫たちが早期に新しい家族を見つけることができるよう、皆様からお預かりした寄付金を、物資支援、医療費支援などにより保護犬・保護猫たちに直接お届けしています。
取材・文 スタジオダンク