能登猫救出大作戦 決行中

震災で拠り所を失う猫たちを一匹でも多く保護するために

こねこサポーター角谷代表 × ペットのおうち®︎ 内海友貴

石川県野々市市に拠点がある認定NPO法人こねこサポーターは、2024年1月に発生した能登半島地震を受け、震災で飼い主を失った猫たちの保護活動を行なっています。代表の角谷さんとサポーターの皆さんに、震災後の保護活動と、今後への思いについてお伺いしました。

レポート ペットのおうち®︎ 編集部

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何より優先すべきは人命

まずは内海さんと角谷さんが繋がられた経緯について、教えてください。

内海 震災発生後間も無く、 ペットのおうち®︎ をご利用いただいている被災地周辺の保護団体の皆様に『ペット関連の支援物資を届けられますが、状況はいかがでしょう』という内容のメールを送らせていただきました。するとすぐに角谷さんからご連絡をいただきました。『今はまだそのタイミングではありません。人間の命を優先させるタイミングです。』と毅然とおっしゃったのが印象的でした。何度かご連絡を取り合う中で私は角谷さんを信頼できる方だなと感じましたし、状況が落ち着いたら、協力して被災した猫たちの保護を進めていきたいと決意しました。

角谷さん 内海さんからのご提案はとてもありがたかったのですが、震災直後は葬儀場も被災していて、小学校の体育館などの避難所にご遺体が安置されているような状況でした。まさに生きるか死ぬかの瀬戸際にいる人が多くいる中で、まずは人命という意識になっていたんです。

不要不急の被災地入りも問題視されていましたね。

角谷さん はい、私は普段介護関連の仕事をしており、地震直後は被災高齢者を安全な場所に移送する業務にあたっていました。道路は大渋滞でなかなか進まず、「この渋滞の中にいる車両は本当に必要に迫られてのものだけなのか?」という疑問が私の中でも湧いていました。結果的に普段は3時間で行けるところまで10時間以上かかり、高齢者の方は用を足せずに着用していたオムツを濡らすことになってしまいました。もしあの渋滞の中に不要不急の車があったとして、それらがなければ彼らの自尊心は傷つかずに済んだのではないのかと思うと、とても悔しかったのです。これらの経験から、物資の搬入を目的とした動物関連のボランティアが被災地に入るのはまだ早いと感じていました。

いくら私にとって猫たちがかわいい、猫たちが心配と思っていても、あの状況では口に出すことはできませんでした。車で被災地を走っていて猫を見つけ、止まって保護してあげたいと思っても行動に移すことはできませんでした。

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必要とする方の元へ届いて初めて支援物資となる

角谷さん 震災から日が経ち「ペットや猫の心配をしてもよいだろう」と思えるようになったころ、まず取り組んだのは ペットのおうち®︎ からの支援物資を受け取り、猫を飼っている方々へお渡しすることでした。

 ペットのおうち®︎ は東日本大震災以降、被災地でのペット支援を行なっています。その経験が生きた部分もあるのでしょうか?

内海 支援物資を集めて、良かれと思って闇雲に現地に送ることは迷惑になりかねない、ということは意識しています。動物保護団体のスタッフの方たちは物資の仕分け作業に膨大な労力と時間を割くことになります。また、行政による大規模な物資支援にはペット関連の物資も含まれるため、必要とされる物資は、こちらで用意してお届けできるスピードを超えて変化します。ですから、タイムリーな物資支援はとても難しい。

だからこそ今回は、角谷さんたちに「何が必要で、どのタイミングでどれくらいの量を、どこに搬入したらよいか」といったことを入念にヒアリングしてから、物資を送ることを心がけていました。

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野々市シェルターの倉庫に置かれた支援物資

そこまで入念に事前の打ち合わせをすれば、飼い主の方に配る際にも効率が上がるのでしょうか?

角谷さん もちろん効率は上がります。しかし今回のように入念に打ち合わせをしていただいても、受け取った物資を飼い主の方々に届けることは簡単ではありません。物資が必要な人を募り、受け取りにシェルターまで来ることができるのかと尋ね、来ることができなければどこまで運んでいったらよいのか、日時はどうするかなどの密なやりとりも必要で、そうした手順を踏んだ後、ようやく物資を必要とする飼い主さんに届けられます。届ける際も道路の状況を考慮したり、無駄なく配達できる順番を考えたりしなければなりません。だからこそ、飼い主の方々から「ありがとうございます、助かりました」という言葉をいただいた時は、喜びもひとしおですし、改めて ペットのおうち®︎ への感謝の気持ちを持ちます。

内海 現地に搬入する事よりも、これらを個別希望者の元にお届けする事は非常に大変なことだったと思います。こねこサポーターの皆様には途方もない活動をさせてしまい、申し訳なく思っております。

角谷さん いえいえ、飼い主さんの元に直接お届けしたことで、物資のお届けと同時に、更に必要な物を確認し届けられたことや、猫の相談や飼い猫の一時預かりなどのお話もできたこと、現地の飼い主さんたちと繋がりができたことなど、やってみて良かったと感じることもたくさんありました。

内海 今回私たちは被災者の皆様のペット飼育支援を念頭に活動に着手いたしました。しかし、今回の震災で最も必要とされた活動は、行方不明になった猫の捜索、置き去りにされた多くの外飼い・地域猫たちの保護でしたね。

被災ペット保護の拠点となる野々市シェルターの建設

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野々市シェルターの玄関にある手作りの看板

迷い猫や、置き去りの猫が非常に多く発生していると聞きました。

角谷さん 倒壊した家から飼い猫が逃げ出したり、地域の人たちが餌やりをしていた地域猫が散り散りになってしまったり、野良猫が遠くに行ってしまって慣れない土地で餌が獲れなくなってガリガリに痩せてしまったりと、多くの問題を抱えています。このような猫たちは、でき得る限りシェルターで保護します。また、迷い猫を捕獲した人や、避難生活などで猫を一時的に飼えない人、あるいは飼育権を放棄した人がこねこサポーターに猫を持ち込めばその子たちも引き受けます。

そういった猫たちの引き受けにあたり必要であった「迷い猫を保護するためのシェルター」を、 ペットのおうち®︎ が開設し、こねこサポーターに運営をお願いされたそうですね。

内海 「物資の次に必要なものはなんですか」と尋ねたとき、角谷さんは「土地とプレハブ」と即答されたました。被災地での切実な状況を実感し、なんとしてでも確保したいと思いすぐに行動に移しました。

土地は比較的容易に確保できそうだったのですが、問題はプレハブでした。工務店などに問い合わせると、見積もりが思いのほか高額で、空調やトイレなどインフラに関する課題もありました。それであればインフラの整った物件を借り上げてしまった方が良いのでは?という発想に至り、今度は不動産会社に問い合わせました。しかし、複数の不動産会社に問い合わせたところ、立地や建物の大きさ、家賃がちょうどよくても、「猫のシェルターに使う」という用途を伝えた途端に断られてしまいました。

角谷さん 私たちも同じような経験をしました。紆余曲折がありましたが、内海さんが現在の物件を見つけてくださり、震災発生1ヶ月後の2月1日より運用を開始することができました。シェルターは被災された飼い主さんからの一時預かりだけでなく、所有者不明の猫たちの保護場所となり、不妊・去勢手術や怪我や病気の治療が必要な猫たちの療養場所になっています。また、猫を引き取っていただく方にじっくりと見学してもらうこともできます。それまでは私の自宅で行っていた活動でしたが、シェルターという拠点ができたことで、活動範囲が確実に広がりました。

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野々市シェルターでくつろぐ猫ちゃん

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のびのび

全国の保護団体と連携する保護継承会

角谷さん ただ、シェルターができても、保護できる猫の数は物理的に限界があります。そのため活動を続けていくには、保護中の猫たちを新たな里親へ譲渡して、シェルター内に空きを作ることが必須なのですが、石川県内だけでは里親に応募してくださる方が足りず、なかなか譲渡が進まないという状況があります。

そこでこねこサポーターは、 ペットのおうち®︎ と協力して「保護継承会」を開催することにしました。保護中の猫たちを全国の保護団体に引き渡し、保護を継承いただいた団体の方で里親探しを行ってもらうのです。

内海さん 「保護継承会」では野々市シェルターに全国の保護団体が集まり、事前の割り当てにしたがって猫たちを引き渡していきます。割り当ては、引き渡した先の保護環境や猫同士の相性、当日の猫の体調などさまざまな要素を考慮して柔軟に決めていかなければなりません。

こうした骨の折れる作業を継続的に行っていくことで、保護した猫たちには新たに里親を探す機会を、シェルターには新たに保護した猫を迎え入れるスペースを確保することができるのです。 ペットのおうち®︎ とこねこサポーターは、今後も協力して保護継承会を開催し、野々市シェルターはその拠点として活用していく予定です。

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野々市シェルターで仲の良い2

「自分たちは潔白だ」ではなく「あの人たちは潔白だ」と思われる必要がある

角谷さん 無事譲渡を経て新しく飼い主になってくれる人は、私たちのような保護団体にとってとてもありがたい存在です。しかし「この猫が気に入ったんですね、はいどうぞ」と簡単に引き渡すことはしておらず、里親になるまでにさまざまな手続きを設けています。「そんなに手間がかかるなら要らない」とおっしゃる方も、中にはいらっしゃいます。

緊急事態でもやはりそういった手続きは必要なのですね。保護中の猫を早く譲渡すれば、シェルターに空きができて、よりたくさんの猫を保護できるという考えには流されないのでしょうか?

角谷さん もちろんできるだけ多くの猫を保護したいと常に考えています。しかし、過去にとても印象的な電話をいただいたことがありました。

「あなたたちが、うちの猫を持っていってしまったんじゃないか」愛猫が逃げてしまった飼い主さんから、こんな苦情が寄せられたのです。もちろん、こねこサポーターは、飼い主や餌やりさんがいる猫を、ご本人への確認なしに保護することはありません。しかしどんなときでも適切な手続きを経て譲渡しないと、このような苦情にキッパリと「うちはそのようなことをしていません」と答えることができないと思ったのです。

内海 なるほど、ボランティアをする以上、自分たちが潔白であると思うだけでは足りず、誰からも潔白であると思われる必要があったのですね。これは保護活動を続け、拡大していくためには切り離すことのできないテーマかもしれませんね。

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ペットが与える"生きる"ための活力

内海 中長期的に続く被災地支援において、私はペットが持っている「人と人とを繋ぐ力」「人に活力を与える力」に期待しています。

具体的にはどういうことでしょうか?

内海 自然災害後の避難生活では、環境が大きく変わり周りの人とコミュニケーションを取る機会を失ってしまう方がいます。実際に過去の大震災では、仮設住宅に入ったあとにうつ病を患ってしまったり、自分の命を絶ってしまう方もいたと聞いています。そんな時、避難所や仮設住宅エリアにペットを世話できる環境があれば、餌やりなどを通じて、初対面の人たちと新たなコミュニティを築きやすくなります。こねこサポーターのメンバーである塚本さんは、それがうつ病や自殺の予防になると考え働きかけを行なってくださっています。

また、被災地では、家族、家、財産、仕事など、あらゆるものを突然失い、生きる気力を失いかねない状況が起こります。自分自身に置き換えて考えた時、すベてを失い正気を保っていられる自信がありません。しかし、ペットや子供など、自分が守るべき存在が残されていれば、即座に立ち上がり、ご飯を確保するために行動を起こす事ができると思います。それが、私が期待するペットの「人に活力を与える力」です。

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角谷さん だからこそ、ペット可の仮設住宅ができたら一番理想的だなと思います。

角谷さん、こねこサポーターの皆さん、本日はありがとうございました。最後に、皆さんが思い描く、保護活動の未来を教えてください。

角谷さん 私の最終目標は、活動を続けていった先に猫の一時預かり活動が要らなくなることです。私たちの活動に賛同して協力してくれる、 ペットのおうち®︎ のような団体や個人が増えて、保護が必要な猫がゼロになればいいなと思っています。ただそれはすごく遠く、大きな目標なので、まずは関心を持ってくれた若い人が参加しやすいルールが作れたらいいなと思っています。若い人は仕事の時間がありますので、保護活動のルールをきつくしたら、気持ちはあってもなかなか参加することができません。仕事を持っている人でも、子育てしている人でも、できるだけたくさんの人に参加していただけるこねこサポーターにしていきたいです。

内海  ペットのおうち®︎ は、保護できないペットがゼロになる未来、ペット文化のために犠牲となるペットがゼロになる未来に向けて、活動を前進させていければと思います。

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内海と角谷さん(右から3人目)、こねこサポーターの方々

レポート ペットのおうち®︎ 編集部

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