相棒であり家族であり"戦友"と支え合って生きていく
ヘラクレスを迎えられた高梨さん
取材・文 金子志緒 撮影 伊藤勇二

左からヘラクレス(オス・12歳)、高梨こずえさん
力強い名前とは反対のインドア派シティボーイ

ヘラクレスというインパクトのある名前がぴったりですね。
高梨さん 私も ペットのおうち®︎ で初めて見たときに衝撃を受けました(笑)。鼻ペチャ系の犬がいたらいいなと思ってパグとフレンチ・ブルドッグのカテゴリで探していたところ、パグとチワワのMIXのヘラクレスが検索に出てきたんです。ムキムキのパグの体にチワワの小顔がついているような彼にぴったりの名前だと思いました。
ヘラクレスという力強い名前なのに、悲壮感が漂う表情が忘れられなくて。子どものころから父が連れ帰ってきた保護犬と暮らしていましたが、自分の責任で犬を迎えるのが初めてなので、3日間ほど迷って都内の保護団体にトライアルをお願いしました。沖縄県で保護されたことしかわからなかったけど、出会いのきっかけなので名付けた方に感謝したいですね。

画像提供:高梨さん
初めて迎える愛犬、そして念願の鼻ペチャ系との暮らしはいかがですか?
高梨さん ドテッとした体格とペチャッとした顔の愛嬌のある感じがかわいいですよね。「ちっちゃいおじさん」みたいなフォルムも魅力かなと思います。犬がいないときはアマガエルにひもをつけて散歩させていたくらいですから(笑)。でもトライアルを終えて譲渡されてからは、犬種のこだわりよりもヘラクレスとの暮らしのおもしろさのほうが大きくなりました。
私はアウトドアが好きだったのに、ヘラクレスはインドア派のシティボーイだったり(笑)。沖縄県で育ったなら海が好きだろうと思って連れて行ったら、肉球の間に砂が入るのが嫌で歩きませんでした。キャンプに行ったときには、「帰るぞ」と呼びかけたときが一番うれしそうでしたね......。試しにドッグカフェに行ったら、めちゃくちゃいい笑顔を浮かべていました。

おもしろいキャラクターで、コミュニケーションも楽しいですね(笑)。
高梨さん こだわりが多くて、散歩の帰りは同じ道に行かない、シーツはピンと張っていないと寝ない、潔癖症で舗装された道しか歩かないんです。おやつは3個食べることにしているらしく、2個しかあげないと「足りない」という顔で待っています。会話も通じていて「5分後に起こして」と言うとちゃんと起こしてくれます。あんまり犬という感じがしませんね。
ご自分の趣味とヘラクレスの性格のギャップは想定外だったのではないでしょうか。
高梨さん でもお互い気は合うと思うんですよね。トライアルを始めてすぐ私に慣れてくれて、2〜3日後には一緒に昼寝をしていたほど。当時は5.3kgだったのでおなかに乗せて寝られましたが、6.7kgになった今は無理です。サツマイモやクッキーが好きなグルテンボーイなので、ぽっちゃりしてしまいました。アダプト(迎えた)日の5月8日には、毎年一緒に写真を撮っているんです。これまでの写真を見返すとだんだんぽっちゃりしているのがわかりますね。
アレルギー対応の食事を考えるうちに、食への意識が高まった

無農薬ファーム&ブルーベリー園&カフェ「B factory」を運営されているんですよね。
高梨さん 東京都に引っ越して事業を立ち上げるタイミングで、ヘラクレスを迎えたんです。振り返るときにはヘラクレスの年齢で逆算するくらい。楽しいときだけでなく、つらいときも一緒に乗り越えてくれました。愛犬との距離感を子どもにたとえる方もいますが、私にとっては相棒であり家族であり、戦友のようです。
絶対に裏切らない存在がいてくれる、いつも私を待っていてくれる、と思うことで、大変な場面を何度も乗り越えられました。あと、肉球をモミモミしたときの香りはアロマテラピーの代わりです(笑)。

きっとヘラクレスも同じように感じているのではないでしょうか。
高梨さん 私のところに来てくれてよかったと思うのは、アレルギーに対応できたことです。トライアルのときから耳のカサカサや夜に嘔吐するのが気になっていたので、譲渡後に動物病院に相談してアレルギーの検査を受けたところ、大半の食物が陽性と判定されてしまいました。 すすめられた食事療法食でもときどき吐いてしまうことがあり、なかなか体調が安定しなかったんです。
試しに農園で採れたキャベツをあげてみたら、嘔吐がパタッとなくなったんですよ。野菜は売るほどあるので、それからは茹でた野菜をドライフードに混ぜてあげています。こういった食事の工夫は、カフェでのアレルギー対応やベジタリアン向けのメニューを考えるときに役立ち、食の安全に対する意識が深まったと思います。
ヘラクレスは野菜がめちゃくちゃ好きなんです。たぶん食べると体調が良くなったことがわかっているからではないでしょうか。散歩がてら農園に行くときには「サラダバーに行こう」と声をかけているんですよ。

お互いにとって運命な出会いですね! 高梨さんは里親以上の存在だと思います。
高梨さん 野菜とフードの組み合わせに行き着くまでに半年ほどかかりましたが、この看病の時間もきずなを育んでくれたかもしれませんね。名前は強いけど体は意外と弱くて。私は心配性だから、少しでも体調の変化が見られると動物病院に駆け込んでしまいます。
6歳のときには夜中にいきなりパタッて倒れて脱糞してしまったことがあったんです。しかも「今までありがとう......」みたいな顔で、私のことを見たんですよ。泣きながら夜間救急動物病院に連れて行ったら、着いた途端元気になったという。貧血と診断されましたが、いきなり倒れたらすごく心配ですよね。今でもアレルギーの投薬と、毎月の血圧検査、超音波検査は欠かせません。自分よりヘラクレスの健康管理をしっかりしていますね。「お互いにピンピンコロリでいこう!」と話しているんですよ(笑)。
保護動物をもっと知ってほしいから、カフェで譲渡会を開催

カフェも運営されているので大変ではないでしょうか?
高梨さん 365日働いてしまうタイプですが、隣にはいつもヘラクレスがいてくれるので助かります。仕事が終われば必然的にヘラクレスが中心になり、"ヘラファースト"に変わることでオンオフの切り替えができるから。
保護活動に貢献したい気持ちもあって、カフェのスペースではいろいろな保護団体の譲渡会やチャリティーイベントを開催しています。人間によって生まれた保護犬や保護猫の問題は、人間が責任をもって解決しましょう、と思っているからです。保護団体の方々に比べたら微々たる活動ですが、私がヘラクレスと出会えたように、出会いのきっかけになったらうれしいですね。
気軽に寄れるイベントがあると保護犬・保護猫を知るきっかけになりますよね。
高梨さん 事前予約が必要な動物愛護センターや譲渡会に足を運ぶのはハードルが高いと感じる方の気持ちもわかるので。カフェで気軽にお茶を楽しみながら参加や見学できる場があれば、動物を迎える予定がない方にも保護活動を知ってもらえるということに意味があると思っています。
お子さんが大きくなって、私のように自分で犬を迎えようと思ったときに、譲渡会が選択肢に入ってきますよね。カフェという場で、ご縁をつなげていけたらいいなと思っています。

保護犬が身近にいた高梨さんの経験につながりますね。
高梨さん 考えてみると、私がヘラクレスと暮らしているのは、子どものころにいたPONのおかげです。実は小学生のときに近所の犬にふくらはぎの一部を噛みちぎられ、それだけでもショックなのに、犬を殺処分するかどうかの判断を委ねられたことがあるんです。
愛犬のPONのことを思い浮かべて、「噛んだ犬は悪くないから、死ぬまで愛してあげてください」とはっきり伝えられました。犬を嫌いにならなかったのは、PONをはじめ、実家の犬たちの存在が大きかったと思います。
ヘラクレスは12歳になりました。子犬は無条件でかわいいけれど、おとなの犬とはライフスタイルを確立するプロセスが楽しい。シニアになるとマイペースで甘え上手になり、だんだん赤ちゃんに戻っていくようなかわいさがあります。一日一日を大切に、くどいぐらい愛情を添えて後悔しないように、Better Half(伴侶)として支え合って生きていきたいですね。

取材・文 金子志緒 撮影 伊藤勇二