少しずつ、恐怖の記憶をほどいていくケイ
不安症や偏食に向き合いながら、たくさんの人に支えられて
取材・文 ペットのおうち®︎ 編集部

お迎え当初のケイは不安症で落ち着かず、動物病院に通う日々が続きました。初めて自宅でヘソ天で眠ってくれた夜、Yさんは「やっと安心してくれた」と涙がこぼれたといいます。偏食もひどく、食べられるフードを見つけるまで何種類も試した結果、今ではお肉が好きになり、果物や野菜も種類によっては口にするようになりました。

ケイはもともと繁殖犬として過ごしており、ブリーダーの方が亡くなったことをきっかけに保護され、長い間、どんな環境で暮らしていたのかもわかりません。慣れない生活に戸惑う様子も見られ 、不安症の影響でお腹を壊したり、トイレトレーニングに半年ほどかかったりと、落ち着くまでには時間がかかったそうです。また、男性や大きな音に敏感に反応し、恐怖から家族に噛み付いてしまうこともありました。それでも獣医と相談しながらサプリメントや行動療法を取り入れ、刺激となる状況を避ける工夫を重ねていくうちに、徐々に落ち着きを取り戻しています。

悩みや不安の多い日々の中でも、専門家や周囲の人たちに支えられながら、ケイとYさんは少しずつ信頼関係を築き、共に乗り越えてきました。Yさんは、譲渡条件が厳しいのは犬と人の両方を守るためだと考えています。環境を整えて覚悟を持っていても、想像以上に大変なことは多く、だからこそ、ひとりで抱え込まずに専門家や理解のある人を頼りながら、その子のペースに合わせて向き合うことが大切だと感じているそうです。

支え合いながら暮らす3年目の今、ケイは表情も穏やかになり、安心できる家族のもとで穏やかな日々を送っています。

取材・文 ペットのおうち®︎ 編集部