救われる小さな命たち:能登半島地震とペット救助の軌跡
チームうーにゃん うさ × ペットのおうち®︎ 内海友貴
石川県能登半島を襲った最大震度7の地震発生の翌日、うささんはもう現地にいました。「これだけ大きな地震が起きればペットが被災している」「ペットの命は後回しにされてしまう」と危惧したうささんは、千葉から自家用車を30時間走らせてペットレスキューに向かいます。
うささんは、震災直後より ペットのおうち®︎ が活動を支援している 災害時ペット捜索・救助チーム「うーにゃん」の代表です。内海はペットのおうち野々市シェルターにて、被災地でのレスキューの様子や、どのような想いで活動を続けているのか、うささんに伺いました。
※ 2月中旬にペットのおうち野々市シェルターで行われた対談と、3月にペットのおうち®︎ のオフィスで行われた対談を集録したものです。
レポート ペットのおうち®︎ 編集部

絵本作家がなぜペットレスキューに
うささんは絵本作家で、本業のかたわら、地震などでペットを失った飼い主にペットの絵を描いてプレゼントする活動を行っています。
2011年の東日本大震災の被災地でボランティア活動に従事し、ペットが置き去りになっている事実を知ったうささんは、2016年の熊本地震の際、災害時ペット捜索・救助チーム「うーにゃん」を立ち上げ、ペットレスキューを始めました。
被災地の救助活動では人間が優先され、ペットなどの動物は二の次となり、瓦礫の下に生き埋めになっている人間は助けられても、一緒にいたペットは助けてもらえないこともあります。また、震災では壊れた家屋や割れた窓から多くのペットが脱走し行方不明になります。
うささん率いる災害時ペット捜索・救助チーム「うーにゃん」は、被災地でペットを救助したり、行方不明になったペットを捜索し、飼い主の元に戻す活動を行う、ペットレスキューを行なうチームです。
「自分だけ助かってしまった」と自分を責める飼い主を救う
内海 活動を始めたのは東日本大震災のときですよね。どのような想いからこの活動を始めたのですか。
うささん 被災地では動物のことに手が回っていないって思ったんですね。でもそのような状況って現地に行かないとわからないと思って、それで現場に向かったんです。最初は「自分ができることをやろう」と思っただけでした。
現地でペットを亡くした人と話すことができて、その人は、人間だったら救助される状況だったが動物だったから救助してもらえなかった、というんです。また他の飼い主さんは、避難所にペットを連れていけないから自宅に残したら、そのまま亡くなってしまったと話していました。
このような人たちは自分を責めるんです。「自分だけ助かってしまった」って。私にはそれがショックで、悲しくて。変えていかなければいけないって思ったんです。

全壊した家屋からのトイプードル救出
うささんは能登半島地震の翌日、現地の道路の状況がまるでわからないまま、活動拠点の千葉から自動車を走らせていました。うささんが車中から「ペットレスキューが必要な方、行きますので電話連絡を」とSNSで呼びかけると、電話がひっきりなしにかかってきました。
まずうささんは、輪島市で全壊した家屋の下に生き埋めになっているトイプードルの「ムーム」の救出に急行します。ムームの飼い主である90歳のおばあちゃんは、やむなくムームを残して避難しており、神戸に住むご親戚からの救助依頼でした。
道中、土砂崩れで道がふさがれ、車で進めなくなったうささんは、車を置き徒歩で現地に向かいました。到着が深夜になったため、救出は一夜明けた翌朝、小雨の中で開始されます。おばあちゃんの2階建ての家は完全に潰れていて、形を確認できるのは屋根だけでした。うささんが「ムーム!」と呼びかけると、ムームは「クン、クーン」と応えました。ムームの居場所はおおよそ特定できたものの、入っていける状況ではありません。もし自分がここで2次被害に遭ったら多大な迷惑をかけてしまう...
すると上空に自衛隊のヘリコプターが飛んできます。うささんはヘリコプターが着陸した避難所に向かい、ヘリコプターから降りてきた自衛官に、生き埋めになった犬を助けたいので力を貸して欲しいと頼みます。すると2人の自衛隊員が、指示が出るまでの時間ならと現場に向かってくれました。自衛隊員はバールやノコギリでみるみる瓦礫を撤去し、遂に隙間からムームの姿を確認します。しかし、自衛隊は指令を受け現場を離れる事に。うささんは腹ばいになって潜り込み、ムームを救出する事に成功します。
うささん これはおばあちゃんのご家族にムームをお渡しする際に伺ったお話なのですが、おばあちゃんはムームを置き去りにしたことで心を痛めてしまい、何もしゃべれない状態になっていたそうなんです。ですが、ムームが生きていて保護されたことを知ってから、おばあちゃんは元気を取り戻し、いつものおばあちゃんに。元のようによくしゃべってくれるようになったそうなんです。
内海 飼い主の方も救われたわけですよね。本当に尊い活動だと思います。

家族は立ち上がる原動力
内海 実際に被災者の方が、うささんと会って救われたと仰っていました。被災地でペットが行方不明になってしまった飼い主さんにとって、うささんはスーパーヒーローのような存在な訳ですが、なぜそこまで頑張ることができるのでしょうか。
うささん 私が行くことで助けられる命があるのなら被災地に行きたいですよね。でもなんていうのかな、私は動物たちが好きだから動物の命を大事にしたいという気持ちがあるのですが、それでもいつも飼い主さんのことを考えています。自身の家を失って、財産を失って、愛する人を失っている人もいて、それでも時が過ぎれば再び立ち上がらなければならないじゃないですか。そのとき原動力になるのって、家族だと思うんです。そしてペットを家族と思っている人には、ペットこそ立ち上がる原動力になるんです。

うささんより、同室避難に対応する先進的な自治体の事例などが記載された資料を頂戴しました。
同行避難から同室避難へ
内海 被災地の現状で皆さんに周知したいことはありますか?
うささん 私が東日本大震災の経験から全国の自治体にお願いしているのは、避難所をペット同行避難/同伴避難可にするだけでなく、ペットと一緒に生活することができる「ペット同室避難可」にして頂きたいという事です。
今回の震災では、私が最初に訪れた町野町の東陽体育館の避難所と、輪島市のふれあい健康センターの避難所で、ペット同室避難が出来ていました。もともと何のルールもなかったため、自然にその形になったそうです。しかし、他の避難所は、ほとんどが同伴もできず、車中泊されている方が多かったです。
内海 うささんが東日本大震災後に出版された「災害で消えた小さな命」を拝読いたしました。ここでは、同行/同伴避難が許されなかったために、引き返したり、車中避難を選択した事で、被災者の方が津波にのまれて亡くなってしまった方のお話が紹介されています。石川県能登半島地震では立ち入る事も危険な半壊した家屋でペットと避難されている方もいると聞いています。津波や余震が懸念されていた訳ですから、少なくとも同行避難については、人道的にどんな形であっても受け入れられるべきなのではないかと感じました。
うささん 同伴避難ができたとしても、犬猫が一室に収容されるような形だと、犬は吠えてしまったり、猫もストレスで体調を崩したり、結局、飼い主さんがペットと一緒に避難所を離れてしまうのです。だからこそ、同室避難の導入をお願いしてます。
内海 うささんに頂いた資料を拝見すると、体育館などの避難所にテントや、しっかりとしたパーテーションを設置して、この中で家族とペットが自由に生活する「同室避難」を導入済みの自治体もあるんですね。この写真を見ると、ペットアレルギーの方と避難スペースを分ける事さえできれば、簡単に実現できそうに思えました。
うささん はい、やると決めれば簡単にできることなんです。
ペットのおうちの活動支援
うささんの被災地での活動は主に、行方不明のペットの捜索活動ですが、活動の合間を縫って、住民が避難し置き去りにされてしまった猫たちのレスキューまで行なってくださっています。
うささんは、ペットのおうちが石川県内にシェルターを開設したことで、この様なレスキューを行うことができていると感謝してくださっております。ペットのおうちに支援金を託してくださった皆さんが、このレスキューに携わっていることを実感していただければ嬉しく思います。

ペットレスキューという活動は、ペットの命を救うだけでなく、被災した飼い主に再び立ち上がる力を与えます。震災から3ヶ月経つ現在も、うささんは石川県能登半島でペットレスキューを続けています。
レポート ペットのおうち®︎ 編集部