• 保護活動
  • 2017年09月18日 | view 8,423
  • Ribbon Bookmark

野犬譲渡にかかわって

私が倉敷市保健所の犬ボランティアとして活動を開始したのは2014年の1月でした。その約1年前に、娘のお友達のご家族で先輩ボランティアさんの御紹介から、倉敷市保健所出身の野犬の子を家族に迎えたのです。EdことEdwardと名付けたその野犬くん、本当に賢くて、ビビりで愛らしくて、ティンエイジャーで自室にこもりがちな子供たちもEdがリビングで生活しているため、リビングに滞在する時間が増え、共通の話題が増え、家族の絆を強めてくれるかけがえのない存在になりました。
1年経過し、Edの分離不安症がおちついたころ、Edと同じような境遇の野犬が保健所で期限を迎えると知り、いてもたってもいられず、保健所に車を走らせ、ある意味無謀にもその子を連れて帰ってしまいました。幸い、その子はアカラスこそありましたが、超ビビりで、威嚇のないかわいい子犬で、Edがよくお世話してくれ、ペットのおうち経由で東京にご縁を繋ぐことができ、新幹線で連れて行きました。
その翌日、今度はまたその子のお兄ちゃんと思われる子が期限、さらにその次に・・そんなこんなで、私のレスキュー活動の滑り出しというのは右も左もわからないままの手探りで、ただ単にラッキーだったのは、どの子もビビりだけれど、威嚇がなく、またよいご縁にも恵まれていったことです。
しばらく保健所に出入りしたあと、ある事件をきっかけに頻繁に保健所に出入りする犬ボランティアが独りというような状態になりました。
http://www.pet-home.jp/petlog/repocg_1/repo552/
そこから色々考えるようになりました。誰も頼る先輩がいないので、かえって肝も座り、係長さんと正直なお話をさせていただき、期限のこと、情報拡散のこと、譲渡審査のこと、相談させていただきました。自分で何ができるか、譲渡しやすくするにはどうしたらよいか。
倉敷は2017年の今現在、4名の獣医さん(女性3名、男性1名)と1名の契約職員さん(犬の扱いが大変お上手な男性)で運営されています。皆さん、犬も猫も大好き。行政の業務として野犬の保護、捕獲にも行かれますが、収容されると懸命に手を尽くされ、医療行為が必要ならば、制約のある中でベストの治療を施し、投薬され、私達ボランティアとも連携し、馴らしをしたり、シャンプー、爪切りなどし、最近では犬舎内お散歩トレーニング(引き回しともいう?!)もし、より良いご縁に繋げるようにがんばっておられます。
よく、処分ゼロをうたうことで、処分を決定する行政に対立されるご意見を目にしますが、私の知る限り、倉敷の職員さん達は処分したいわけではなく、幸せに卒業させるために努力を重ねておられると胸を張っていいきれます。さらに2014年のあの事件以来、処分機に送った犬は今までいないのです。
1枚目のお写真は、保健所の職員さんが作成された大きな大きなポスターです。保健所や市役所に掲示されていました。今は、HPの譲渡のコーナーで目にすることができます。
http://www.city.kurashiki.okayama.jp/2085.htm
2枚目のお写真は、2017年の2月に保健所主催で行われた譲渡会の資料です。その際、1頭1頭の紹介文を作成されています。許可を頂き、シェアさせていただきますが、収容されてから一頭一頭に向き合ってこられた職員さんだから書くことのできる文面だと思います。
http://www.pet-home.jp/petlog/repocg_1/repo13081/
私自身、野犬の子を迎え、どういう点が素晴らしいか、また保護活動をして野犬を譲渡していく経験から、どういう点に気を付けるべきかなど、ともに活動してくれる仲間と一緒に「野犬飼育ハンドブック」というリーフレットを作りました。3枚目のお写真です。これは保健所から旅立つ野犬の飼い主さんに職員さんから渡していただいています。
倉敷では年間約300頭以上の野犬が収容されます。野犬ですから、飼い主さんへの返還はありません。家族となってお迎えくださる方を見つける以外に、この子たちに卒業という道はありません。
今現在収容期間を約2か月頂き、フロントライン、お腹の駆虫はもちろんのこと、9種ワクチン接種、狂犬病予防注射接種、マイクロチップ装着、首輪付け、係留、またトリミングやグルーミングなど、お迎えいただくご家族が基本室内で飼育スタートされる際にうまく滑り出しができるように工夫を続けています。また、実際にお越しになって触っていただいて、譲渡審査(ハンドリング審査)をパスされなくては通常譲渡されません。触れない子を迎えて、困られることのないようにという判断からです。
野犬も心開けばすてきな家族になれる・・そう強く信じています!
でも、考えてもみてください、野原で生活してきていきなり環境が変わり、首輪もつけられたことがない、係留されたことがない・・そんな彼らをどうやってなつかせていきますか?とても時間がかかることですし、シャンプーをしていない子は当然のことながらすごい匂いがするでしょう。フロントラインしていなければ、ノミやダニもお家の中に飛び回ります。便には虫がいっぱいかもしれません。全てを受け入れてお迎えするということはきれいごとで、大変な面もあります。
どうしてこんな記事を書いているかと申しますと、最近、倉敷の子ではない、他県の野犬の譲渡を受けられた方々から、私に様々な相談が入ってくるからです。方々と書きましたが、実際、複数なのです。私は野犬の賢さに心惹かれていますが、正直なところ、自分が触ったことのないこのことはあまりわからないのです。その子のバックグラウンド、捕獲の方法、保健所内での生活、職員さんとのやり取り、自分自身が保健所を訪問し頻繁に触れ合ってからわかってきた付き合い方、それらを総合し、職員さんと相談して募集記事を書いています。それでも、読みが100パーセント合っているわけでもないのです。ですから、何か困られているとき相談頂けるように保健所そして、ボランティアメンバーにご連絡いただけるようお話しています。また、短期預かりなどの初期トレーニングやお散歩トレーニングなどもボランティアがお受けしています。(私のペットログの保護活動には、預かって変わっていく野犬たちの様子もお知らせしています。ご興味のある方はご覧ください。お散歩トレーニングの動画もご覧いただけると思います。)さらに、今も里親様募集中のダンディは、野犬の群れのボスであったことで、特別にプロのトレーナーさんに預け、人との生活ができる訓練を入れながら様子を見ています。倉敷は、そういう意味で譲渡後のサポートにも力を入れています。譲渡後、お迎えくださったご家族一人ぼっちじゃないのです。何より、ご理解くださり、相談くださり、一歩一歩馴らしをがんばってくださるご家族のおかげで、野犬たちの優れた能力を引き出せています。そのことに感謝しています。
どの子も大切な命、幸せをつかんでほしい・・でも、ここにきて、職員さんが言われていること、「譲渡して万歳ではなく、飼い主さんと犬が共に幸せになって初めてよかったといえるのです。だから、無理な譲渡はできません。」という言葉が重くのしかかります。
私は倉敷市保健所の職員さん達の譲渡への意欲を誇りに思っています。そして、ボランティアとしてよりよい方向に共に頑張っていけたらと願っています。さらに倉敷が何らかの指標となって、野犬への理解が、譲渡が、広がっていってほしいと願ってきました。でも、安易な譲渡は、危険だということ、今一度考えてみないといけない段階に来ているような気がしています。
気になる子がいて・・その子をお迎えしたくて・・では、その子がおうちにやってきて問題が起こったとき、相談窓口はありますか?信頼おける獣医さんやトレーナーさんとの連携はできそうですか?また、出身保健所やセンターに保護される前もしくは収容中の様子を聞くことができますか?お繋ぎされたボランティアさんにアドバイスは頂けそうですか?

追記
複数のご家族から、ネット拡散から目にした野犬の子、期限間近ということでなんとか助けたくて、首輪のついていない子をバリケンごと空輸などで受け取ったけれど、手が付けられなくて・・とご連絡いただき、私がお伝えしたことを書いておきます。
バリケン(クレート)から出さないこと。ご飯やトイレもそこで済ませていただくしかありません。クリニックに事情をお話し、出来るだけ早くバリケンごとクリニックに連れて行くこと。その前夜の9時以降食事は抜いておくこと、そうしてサイズが合いそうな首輪複数(2本以上、ダブル首輪をお勧めします。また、首輪は指1本から2本がやっと入る程度のきつめでなくては首輪ぬけします。)と係留用チェーン(通常のリードは噛みきられる危険性があります。)とを持参し、獣医さんにバリケンの外から麻酔を打っていただき、眠らせ、犬が眠っている間に血液検査やフロントライン、混合ワクチン、首輪付けチェーンつけなどを行い、シャンプーは難しいと思うのでドライシャンプーやシャンプータオルなどを利用して体をきれいに整えるように。室内飼育の場合、どうしても匂いは気になるでしょうから、出来る範囲で清潔にしてあげたいですね。体重は、バリケンごと計測し、バリケンの重量を引けばわかりますので、麻酔量も計算できるはずです。もし問題なくすぐにでも避妊去勢できるようなら、早めにお願いしておくこと。(実際にお迎えして1週間ちょっとで獣医さんに行く前に出産した野犬のママもいたのです・・)
首輪がついていたなら、その先室内で係留ができると思いますが、首輪もついていない野犬、脱走したくて向かってくる可能性もあり、バリケンから出してしまうと制御不能になることがありますので。人の様に手が使えない彼らは自分を守るために、牙をあてるしかないということ。彼らをパニックに追いやらないためにも、眠らせて首輪などの装着をすることをお勧めします。
また、先住犬がいる場合、そのこのワクチンやノミダニ予防をしっかりしておくようにともお伝えしました。
この程度のアドバイスしかできませんでした。

会員登録をするとペットログにコメントをする事ができます。
会員登録がお済みの方は、ログインしてご利用下さい。

この投稿をしたメンバー

繋(倉敷市保健所犬ボランティア)(保護活動者) 繋(倉敷市保健所犬ボランティア)(保護活動者)

繋(倉敷市保健所犬ボランティア)

ユーザーID:140925

保護活動者(非法人)・岡山県

このメンバーのペットログ

この投稿に登場するペット

  • Edward Edward

    Edward ♂

    その他の雑種

    0繋(倉敷市保健所犬ボラン...

おすすめの記事

PAGE TOP

「”犠牲を伴なうことのない”持続可能なヒトとペットの共生社会」の実現へ
ペットのおうち®︎ が取り組むコト。

ペットを犠牲にしなければ成り立たないのなら、ペット文化は一刻も早く消滅した方が良い。

犬との暮らし、猫との暮らしを次の世代に引き継ぐためには、変えるべき価値観、習慣、文化があります。

ペットのおうちサポートメンバーアイコン

サポートメンバー登録へ

閉じる